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日本の魅力を発信し、海外との架け橋になる


和テンション株式会社 代表取締役 鈴木康子氏

創業年月 2011年2月 事業内容 外国人向けフリーマガジン「WAttention」、
「WAttention Tokyo」の発行ほか
資本金 950万円 従業者数 8人
URL http://www.wattention.com/

事業概要

 外国人に日本の文化や観光情報などの様々なコンテンツを紹介するフリーペーパー「WAttention」および「WAttention Tokyo」の発行を軸に、観光庁や経済産業省、自治体などのインバウンド誘致事業の受託、さらには東南アジアに進出する日本企業へのコンサルティングなどを手がけています。
 「WAttention」は現在、東南アジア各国や韓国、アメリカなど9カ国で現地の言語で発行しています。コンテンツとしては、各版共通の日本の文化や観光に関する情報や、各国それぞれにおける日本にまつわるイベントやショップなどの情報が主体となっています。
 「WAttention Tokyo」は、訪日外国人観光客向けに東京のタウン情報などを紹介するもので、英語を母国語としない国の人にでも理解できるようなわかりやすい英語で編集しています。

創業の経緯

 私は20代からシンガポールで暮らし、現地の広告制作会社に勤めていましたが、1998年に独立し、シンガポールに住む日本人向け情報誌「マンゴスティン倶楽部」の発行および日本のメディア向けにシンガポールの情報を提供するMinook International社を立ち上げました。マンゴスティン倶楽部は、日本語の情報誌ですが「日本人が良いという店は信頼できる」と、一部の現地の人にも読んでいただいています。
 また、5~6年前からシンガポールに進出する日本企業が増え始めたのですが、その一方で現地のことをよく理解せずに進出し、撤退していく企業も少なくないことを知りました。こうしたことから、現地の人向けに、現地に進出する日系企業のショップ情報などを含めた日本の魅力を伝える情報誌をつくれば受け入れられるのではないか、と考えました。そこで、2010年1月、新規事業として「WAttention」を創刊したのです。
 しかし、シンガポールに居たのでは日本企業に営業するチャンスは月1回程度の割合で開催される日本フェアぐらいしかありませんでした。日本の最新情報をキャッチするのにも支障があります。また、世界に向けて日本の技術を発信していくには東京で事業をした方が良いと考えるようになりました。そこで、2011年にシンガポールの会社とは別に和テンション株式会社を設立し、東京に拠点を構え、日本で創業しました。
 当社を設立した根本的な思いには、「日本に関する正しい情報を世界に伝え、日本を正しく知ってもらいたい」という思いがあります。「ジャパン=フジヤマ、ゲイシャ」という外国人がいまだに多いからです。そして、多くの外国人に日本の魅力を伝えることで、日本に来てもらい、日本の繁栄に貢献したいという願いがあります。

融資申し込みの経緯

 シンガポール時代から長く紙メディアを手がけてきたので、収益化するノウハウを蓄積しています。「WAttention」も紙メディアとして発行しているのですが、これをさらに広げるには、やはりネットやアプリに展開する必要があります。設立とともに自社で作成したホームページも立ち上げましたが、アクセス数は上がりませんでした。やるからには差別化できるものを構築しなければならないと考え、AR(拡張現実)技術を導入したスマートフォン向けアプリを開発することを決めたのです。この技術は、アプリをインストールしたスマートフォンを提携した飲食店などのメニューにかざすと、ユーザーの国の言葉に翻訳されるという画期的なものです。私たち日本人も、外国に旅行した時、入ったレストランのメニューが日本語で書かれていたりすると、かえって興ざめしてしまうことがあると思います。このAR技術があれば、日本の情緒を純粋に味わいながら自分の国の言語で内容が理解できるわけです。
 この開発や、運営スタッフ採用のために資金が必要となりました。そこで、「WAttention Tokyo」事業を東京都中小企業振興公社の事業可能性評価事業に認定してもらい、助成金を得ることができ、また取引先からの支援もいただきましたが、アプリ開発に係る費用の不足分は日本政策金融公庫に融資を申し込むことにしました。

融資をめぐるエピソード

 事業計画書などは、当社で事務局長を務めている夫が作成してくれました。夫は翻訳会社を経営していましたが、夫婦でバラバラでは非効率ということで会社を一体化したのです。
 公庫の担当者に説明した当初、AR技術が一般化していない時期であったため、ARについてなかなかイメージしてもらえなかったようです。しかし、担当者は「実際にアプリのイメージを見せてほしい」とすぐに来社してくれました。そこで、ARを使った先行事例をお見せすると、「画期的ですね!ぜひ開発を進めてください」と評価して、支援してくれたのです。決算内容など収支面だけにとらわれず、事業内容をよく見ていただいて支援してもらえたのはうれしかったですね。また研究開発が段階的に必要である為、当面の間、元本返済は不要で出資に似ている資本性ローン(※)は当社のような会社にとって、とてもありがたい融資制度です。
(※)資本性ローンとは、期限一括返済、無担保無保証人、業績に応じた金利設定で、金融検査上自己資本とみなせる融資制度です。
 Webサイトを活用していますので日本に来る前に当社のサイトで日本について調べて計画を立てるとともに、スマートフォンでアプリをダウンロードしてもらえば来日後すぐにガイドブックとして活用してもらうことができます。Webサイトやアプリの情報は常に更新するので、再来日に繋げることもできると考えています。一方、「表参道で外国人にも人気のショップがニューヨークにオープン!」といった情報を発信することで、日本企業の後押しも可能となります。まさにこのアプリが日本と海外を双方向でつなぐ架け橋になるのです。これができるのも、公庫の融資のおかげですね。

ビジネスの現状と展望

 当社の売り上げの半分は、情報誌などへの広告掲載料が占めています。もう半分は、官公庁や自治体などによるインバウンド誘致のための印刷物やイベント展示物の企画・制作、日本の物産の輸出促進事業、通訳・翻訳の手配、旅行会社と提携してのツアー造成の受託などが占めています。国は“ビジット・ジャパン・キャンペーン”などインバウンド観光客の誘致に力を入れていますので、その事業を受託した広告代理店はじめ、旅行会社や運輸会社などからいろいろな業務の依頼が舞い込んできています。
 私がいま一番やりたいのは、羽田空港にも近い大田区の商店街を外国人で一杯にすることです。外国人にとっての日本の一番の魅力とは、世界遺産や秋葉原の電気製品といったものよりも、日本人そのものではないかと思うからです。おつりを誤魔化したりしない、サイフを落としても返ってくる、といった国は世界広しといえど日本ぐらいなもの。日本の商店街のお肉屋さんでコロッケを買えば、1個おまけしてくれたりします。そんな日本人の魅力が凝縮されている商店街に、多くの外国人に来てほしいと願っているのです。

これから創業を目指す人へのメッセージ

 事業を成功させるには、情熱が絶対に必要だと思います。その情熱のリソースは、実体験つまり人から聞いた話ではなく、実際に自分で見聞きしたり、経験してみて心底「自分がやりたい!」と焦がれたことが望ましいでしょう。そうでなければ、不安定になると思います。
 そしてもう一つ重要なのは、資金です。現実的な資金計画が絶対に必要です。うまくいかない時にどうするか、二重三重の対応策を考えておくこと。それがあれば、落ち着いて事業に取り組めるはずです。ぜひ頑張ってください!