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時代に合わせて新たな漆の魅力を広めたい


松田漆企画 代表 松田恭幸氏

創業年月 2009年4月 事業内容 商業施設内装、工芸品などの漆加工販売
利用した融資制度 新規開業資金 500万円 従業者数 1人
URL http://matsuda-urushi.com

事業概要

小売店や飲食店などの商業施設の内装およびショーケースや、工芸品への漆塗り加工・製作を受託しています。また、「altar【漆】」というクリスチャン向けのオリジナル漆塗り家庭祭壇を当社HPで販売しています。この「altar【漆】」の販売が拡大したきっかけは、販売先を探していた2007年に、面識のなかった大塚喜直司教に勇気を出して手紙を出し、製品をクリスチャンに紹介してもらえないかとお願いしたことでした。しばらく経った頃に司教から連絡をいただき、直接お話しする機会を得ました。そこで、私の気持ちが伝わったのか、カトリック総本山であるバチカンの「諸宗教省対話評議会」に奉納させていただけることになったのです。地元の新聞にも大きく取り上げられ、固定客がつきました。 2010年に開かれた上海万博では、知人からの紹介で仕事を受注でき、日本産業館内の料亭「紫 MURASAKI」の廊下の壁面を銀箔加工しました。 ひとつの漆塗り工芸品を製作するには、木地師(きじし)、木彫師(きぼりし)、塗師(ぬし)、蝋色師(ろいろし)、箔押し師(はくおしし)、といった平均9種類の専門職人による分業制が取られるのが一般的です。私は塗師にあたり、工程の中間に位置しているため、工期の調整管理をやりやすいのです。そこで、こういった職人たちとネットワークを組み、私が営業活動や顧客との交渉および製品の特性ごとに職人を選定し、工期管理、料金交渉などの調整業務を一手に担うことにしたのです。

創業の経緯

父は近畿経済産業局長賞を受賞するほどの漆工芸職人(伝統工芸士)で、主に仏壇・仏具の漆塗りを手掛けています。私は19歳で父に弟子入りし漆職人の道を歩み始めました。親子で伝統の作法に従い製作を続ける中で、もっと早く、多くのお客さまに製品を届けたいと考えた父が、新しい工法に取り組み始めたのです。それは、刷毛(はけ)を使って漆を少しずつ塗るのではなく、スプレーガンで吹きつけるという型破りのものでした。私は度重なる失敗を繰り返しながら父の工法を体得しました。 吹きつけ工法の確立により、ハイスピードで製品加工が可能となり、量産化への道が開かれたのです。その頃から私は、「漆塗りの美しさをもっと多くの人に見てもらいたい」と思うようになりました。漆が用いられることが多い仏壇・仏具は寺院の奥に納められるものが多く、それほど多くの人の目には触れないからです。 そこで、もっと多くの人の目に触れる場所はどこかと考え、商業施設などへ製品を展開することを思い立ったのです。2009年頃から、父を手伝い、仏壇・仏具の仕事を8割ほどこなしながら、残りの2割を新分野の仕事に割き始めました。父が加盟している商工会に相談し、内装デザインを手がける関西の設計事務所などに片っ端から営業するとともに、内装業組合にも加入して仕事の紹介をお願いして回りました。 しかし、2割の時間では思うように進展しません。中途半端ではだめだと反省して、父の元から独立し新分野に集中することに決めたのです。父には反対されるかと少し心配でしたが、賛成してくれ、設備の揃った作業所を提供してくれました。漆塗りの可能性が広がると思ってくれたようです。

「京都文化ベンチャーコンペティション」への応募の経緯

独立して、少しずつ仕事が入るようになった頃、商工会から京都府主催の、「京都文化ベンチャーコンペティション」への応募を勧められました。その当時、実はパソコンが使えなかったのですが、独学して丸4日がかりで事前審査書類を作成。漆塗りという事業内容が目を惹いたのか、2次審査に進めることになりました。3次審査は、200人の観衆の前で5分間のプレゼンテーションでした。他の人は、パワーポイントを使って発表するとのことでしたが、私はパソコン初心者。そこで、パソコンは使わず製品実物(建具)を持ち込み、紹介しながら大きな声でわかりやすく説明することにしました。 実は、人前で話すのは苦手だったのですが、プレゼンテーション力はビジネスでも必須のスキルだと思い、ステップアップの機会にしようと考えました。商工会の人に協力してもらいながら、練習を積み本番に臨みました。プレゼンテーションは上手く行き、結果はなんと、近畿経済産業局長賞、京都府知事賞、京都銀行賞のトリプル受賞でした。大きな自信につながりました。

融資申し込みの経緯

創業後間もなくして、賞をいただいたこともあり、さらに事業を拡大していきたいと考えました。そこで、自己資金の250万円に加えて展示会への出品費、HPの制作費等で500万円を日本公庫に申し込むことにしたのです。融資を申し込むのは初めてで、何もわかりませんでした。でも、コンペティションの時と同様、融資担当者との面談でもきちんと自分の言葉で伝えようと思いました。 その結果、満額の融資が決定し、自分の事業にまたひとつ自信がつきました。

ビジネスの現状と展望

海外のブランド宝飾店やファッションショップ、外資系のホテルなどからの引き合いが多く入ってきています。海外の有名ブランド店の看板を日本で製作して輸出したこともあります。 私はもっぱらインテリアデザイナーと組んで仕事をすることが多いのですが、彼らは漆塗りや箔押しの“常識”を知りません。「こっからこのへんまで漆を敷いて、その隣から少しずつ金箔を押してくれへん?」などと、とんでもないアイデアをぶつけてきたりします。こういった既成概念を超えるチャレンジが伝統工芸に新たな価値をもたらすものと信じています。どこにもない、オリジナルな製品を作りたいという思いはプロジェクトに関わる全員が共有しているので、私も日々必死に新たな技法を探っています。とても大変ですが、こうしたクリエイティブな時間がたまらなく楽しいのです。 これからも色々なインテリアデザイナーと組んで、箔押しの“常識”破りな要求も含めて多彩な感覚を取り込み、どんどん新しいカタチの施工例を増やしていきたいと思っています。そして、私が手がけた漆塗りのきれいな内装の店で、1人でも多くのお客さまに食事やショッピングを楽しんでもらえたらうれしいですね。ネットワークを組む職人たちとも連携を深めながら、結果として新しい伝統が創造できればと思っています。

これから創業を目指す人へのメッセージ

頭の中でどれだけ考えていても、形になることは絶対にありません。実際にアクションが伴わなければ何も始まらないと思います。そして、形になって初めて人に見てもらうことができるのです。ビジネスプランも同様だと思います。「はじめの一歩」が大切です。踏み出すことで色々なことが動き出すと思います。

日本政策金融公庫 国民生活事業 担当者への質問

 融資を決めたポイントは何ですか?

松田様は、漆塗りの仕事一筋でお父様の元でしっかりと修業され体得された技術を使って多くの人を喜ばせたいという強い気持ちが私に届きました。また、商工会等を活用し、営業力を補完したことや、新しい建具のブランド力を上げるためにコンペティションを活用し、受賞されたことで松田様の事業計画がより実現可能なものとなっていました。松田様のこういったご努力により、ご面談時にお話いただいた事業内容が具体的で納得のいくものだったことも融資の決め手となりました。
~創業計画書の書き方等がわからない方は、全国152支店創業サポートデスクまでお問い合わせください~

松田様が受賞した京都文化ベンチャーコンペティションとはどのようなものですか。

京都の文化を新たな角度から捉え、新しい生活の輝きを生み出す独創的な「知恵」を募集し、しっかり育てていく全国初の試みで、平成19年より毎年開催されています。京都全体の文化力を高め、いきいきとした京都を創出するため、文化資源や文化芸術の力を活用したビジネスモデルやビジネスアイデアを幅広く公募しています(京都文化ベンチャーコンペティションのHPより転載)。
なお、2013年度の応募締め切りは9月18日(金)で、10月に1次書面審査、12月に2次面接審査、2014年2月または3月に最終公開プレゼンテーションがあります。