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“エシカルジュエリー”で世界の子どもたちの笑顔を取り戻したい


株式会社HASUNA 代表取締役兼チーフデザイナー 白木 夏子氏

創業年月 2009年4月 事業内容 人・社会・環境に配慮した道徳的なジュエリーの販売
利用した融資制度 女性、若者/シニア起業家資金 他 従業者数 10人
資本金 950万円(資本準備金100万円) URL http://www.hasuna.co.jp/

事業概要

当社は、東京都と愛知県に直営店舗を構えて“エシカルジュエリー”の企画、製造、販売をしています。エシカルとは、“倫理的な”、“道徳的な”という意味で、当社が考えるエシカルとは、「人や社会・環境のさまざまな問題を配慮すること」です。 日本で販売されているジュエリーは、通常、問屋から石を買い付け、加工会社の手で加工されたものが店頭に並びます。誰も、問屋に並ぶ石がどこで誰の手で採掘されたものかわかりません。たとえば、南アフリカで採れたダイヤモンドは、平均5人のブローカーを経て日本に入ってくるのです。また、採掘現場では、不当な児童労働や環境破壊が行われているケースもあります。 しかし、当社はジュエリーに使用する素材が、どこの鉱山から誰の手によって採掘されたものかわかるように、採掘者と直接契約を結んだものを可能な限り使用しています。私たちのように、直接取引をしているジュエリー会社は非常に限られています。 当社のカナダ産、ボツワナ産のダイヤモンド、コロンビアの金は紛争や児童労働がなく、環境に配慮して採掘されたものを使用しています。その他、中米のベリーズシティの貝殻や、ルワンダの牛の角を使ったジュエリーを取り扱っています。悲劇を生みだすのではなく、笑顔を生み出すジュエリーを作っているのが、当社の特長です。

創業の経緯

私は、父の実家のある愛知県一宮市で育ちました。繊維業が盛んな町で、はた織り機の音がいつも聞こえていました。母はデザイナーで父は繊維関係の商社マン、自営業の家ではありませんでした。 小さい頃は内向的で、暗い生徒でした。自分の世界にこもってモノづくりをするのが大好きな少女でしたが、女子高に入り、みんなで何かを作り上げる喜びに目覚めました。高校卒業時、なじみのあったファッションや芸術関係の仕事がしたいと両親に相談したところ、甘い世界じゃないと猛反対を受け、次に好きだった英語を勉強するため、地元の短大に進みました。 短大で、ある時、紛争や地球環境をテーマに世界各地で活動されているフォトジャーナリストの桃井和馬さんの講演がありました。それまで、ボランティアに全く興味がなかった私は、桃井さんの話を聞いて、「今まで私は何をしていたのだろう」と大きな衝撃を受けたのです。その日から、私の人生は変わりました。「迷っている時間がもったいない、今、この時にもゴミ山で生活している子供たちがいる」といてもたってもいられず、フィリピンやマニラに1週間出かけました。 その後、ロンドン大学キングスカレッジに留学し、「国際開発学」を学び、最貧困層の現場を見るため、21歳の時にインドのタミル州にある村に2カ月間滞在しました。カースト制度が根強く残るインドの村では、アンタッチャブル(不可触民)と差別され貧しい生活を強いられている人が1億人もいたのです。鉱山では、子供が一切笑顔を見せずに採掘作業をしていました。高齢の女性に話を聞いたら、「あなたに何ができるの?!お金さえあれば私たちはこの生活から抜け出せるのに」と言われ、自分の非力さを痛感しました。 インドから戻り、貧困問題を解決するため、国際機関で働きました。でも、そこでは、「援助」という形の解決方法しかなく、対等な立場からの問題解決にはならないと歯がゆさを感じました。そこで、私は貧困層に適切にお金が流れるビジネスができれば世界が変わると思い、不動産投資会社で2年間がむしゃらに働き、創業資金を貯めた後、27歳で㈱HASUNAを立ち上げたのです。欧米に、エシカルジュエリーがあることを知り、これだと思ったのです。 ジュエリー業界で働いたこともない私の独立に、当時つきあっていた彼(現在の夫)でさえ反対しました。立ち上げた後も、すぐに上手くいくはずはなく、何度もくじけそうになりましたが、インドで出会った人たちの顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え、自分を奮い立たせることができました。

融資申し込みの経緯

採掘者と直接取引をするには、先に資金が必要でした。従業員を雇うにもお金がいります。しかし、お金が会社に入ってくるのは、採掘された石をジュエリーに変えて、販売した後です。 法人を設立する際、自己資金で150万円を捻出し、さらに資金を集めるために、両親や、友人に頭を下げて回り、11人から合計600万円を集めました。このように夢を応援してくれる人を“エンジェル”と言いますが、集めるのは本当に辛いので二度とやりたくありません(苦笑)。 それでも資金が足りなくなり、知人やインターネットで公庫の存在を知り、申し込みをしました。その際、500万円の融資を受けることができました。また、さらにその2年後、名古屋の直営店のオープン資金として追加融資を受けました。

融資をめぐるエピソード

始めて融資を申し込んだ当時、実は借りることができませんでした。ジュエリーに関する学校に通っただけで実務経験はゼロ、販売見通しが全く立っておらず、エンジェルからの資金もなかったため、準備不足だと言われました。熱い気持ちも上手く担当者に伝えられなかったことを覚えています。 しかし、その後、一生懸命エンジェルを探して資金を集め、百貨店などに製品を置いてもらえるようお願いして回った結果、販売見通しが立ち、手元にお金も少しずつ入ってくるようになりました。そこで、再度、計画書を持って公庫に行ったのです。 この時は、事業内容の説明も自信を持って行えましたし、何より2年近い活動実績があったので、融資をしてもらうことができました。公庫の担当者は、毎回違いますが、どの担当者も、こちらの話をきちんと聞いてくれました。公庫から資金調達をしてみてわかったことがいくつかあります。資金は集められる時に集めておくこと、「ソーシャルビジネス」に媚びず、現実的な事業計画を立てること、借入用途をしっかり説明すること、信用度の高い取引先を見つけておくこと、正式に申し込む前に一度公庫に相談に行くことが大切だと実感しました。

Japan Venture Awardsへの応募から中小機構理事長賞まで

中小企業基盤整備機構が主催する2012年のJapan Venture Awardsに応募しました。自分の考えるビジネスモデルがどのくらいの人に受け入れてもらえるか客観的に知りたかったのです。準備は大変でしたが、自分の想いを一生懸命伝えた結果、中小機構理事長賞をいただくことができました。これまで、私を支えてくれた方々に少しだけ恩返しが出来たと同時に、多くのメディアに取り上げていただき、エシカルジュエリーの存在を広く知ってもらえたと思います。応募してよかったと思います。

ビジネスの現状と展望

現在、3つのジュエリーコレクションを展開しています。ブライダルリングを中心としたアニバーサリーコレクション「AIMÉE(エメ)」と、ブランドアイコンである「蓮」をモチーフに、18金フェアトレードゴールドと天然石を使用したコレクション「bijoux(ビジュー)」、世界を“旅”するように、好奇心を刺激するファッション性の高いジュエリーを取り揃えたコレクション、「Voyage(ボヤージュ)」です。2013年3月6日に東京の伊勢丹新宿本店に店舗をオープンし、現在はその運営に注力しています。 ありがたいことに、私個人として、講演会等に呼ばれる機会も多くなり、多くのお客さまに当社の製品を知っていただくよいきっかけになっています。一人でも多くの方に、エシカルジュエリーの存在を知っていただき、デザインを気に入って購入していただいたら、その行為が世界にいる貧困層の子どもたちの笑顔につながっていくのだと知ってもらいたいです。決して情や負の気持ちからモノを買ってもらうのではなく、「美しくなりたい」という気持ちで買っていただけたらと願っています。

これから創業を目指す人へのメッセージ

創業した時、ジュエリー業界にコネがなかったばかりか、経営スキルやHP制作のスキルもありませんでした。人を雇うお金もなかったので、事業内容に賛同し、知識や技術をボランティアとして提供してくれる“プロボノ”を募りました。みなさんも、自分の熱意を語り、プロボノを募ると、より真剣にビジネスに向き合えると思います。 創業には、苦しいことがたくさんありますが、「乗り越えられない試練は与えられない」、「求めよさらば与えられん」と自分に言い聞かせて前に進んでいます。いい意味での鈍感力を持ち、楽しんでやることが大切だと思います。情熱は伝播します。自分以上に従業員は熱くはなれないことを肝に銘じて、常に自分自身がワクワクしていてもらいたいと思います。 ※本インタビュー記事は、2012年11月6日に、日本公庫が行った「ソーシャルビジネス創業セミナー」で白木社長にお話いただいたことを中心に構成しております。 尚、2013年1月に、白木社長の想いが詰まった書籍が販売されています。そちらもご覧ください。

●白木社長に聞く!ソーシャルビジネス成功の5つのポイント

ソーシャルビジネスとは、社会起業とも言われ、近年注目されているビジネス形態のひとつです。(株)HASUNAのように、社会に貢献するビジネスの総称です。 白木社長が考えるソーシャルビジネス成功の5つのポイントをご紹介します。 ◆ミッション、ビジョンが明確にあること ◆本当にあなたがやらなくてはならないのか? ◆仲間を巻き込む ◆先輩起業家の話をよく聞く、本を読む ◆自分がワクワクしている!

Japan Venture Awards(JVA)とはどのようなコンペティションですか。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が主催し、経済産業省中小企業庁をはじめ、日本公庫や日本商工会議所等が後援をしている起業家のコンペティションです。企業創設後、おおむね15年以内で、高い志を持ち、自立する中小企業等の経営者または代表者を顕彰するため、平成12年に創設されました。毎年、8月頃に応募が始まり、翌年2月に経済産業大臣賞・中小企業庁長官賞ほか各賞が発表されます。詳しくは、JVAのHPをご覧ください。 http://j-venture.smrj.go.jp/